伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)女性一名

 あの、お爺ちゃんが商いに行って帰りよりましたら、

鶴が罠(わな)にかかって、あの、鳴いておっとば、

あの、お爺ちゃんの助けらした。

そこで、あの、晩、休んでおられたら、あの、

雪降りに、その鶴が女になって来て、

「その、泊めてください」て。

そして、そこに何日(なんち)でん泊まりよったら、

「あの、自分が、あの、機を織るから」ち言(ゅ)うて。そして、

「糸を買って来てください」て、爺ちゃんに言うて。

そして、糸を買って来らしたら、

「あの、自分の体は機織る時は見てはいかん」

て言(い)うて、機ば織りよらしたそうです。

自分な羽を一枚一枚取って、立派なもう、織った機を殿様に見せて、

あの、大抵あの、たくさんのお金になって、それば、

「まあ一反、まあ一反」ち、娘さんにあの、頼んで売って、

あの、もう自分な痩するごとなって、大抵あの、働いて、

「この私が、いちばん最後に私が織りよっと、見てはいけん」て、

言うちゅらすとば、

そいでんどぎゃんして織りよっじゃろうかと思うて、

婆ちゃんがソロッと開けてみらしたら、その、鶴の形でなあ、

自分の羽を口で包んで、こう見よらす。それからもう、

「見られたもんじゃるけん、今度(こんだ)あもう、

ぎゃんしてお爺ちゃん、婆ちゃんに約束しとったいどん、

体ば見られたけん、もう人間におることはならん」

ち言(い)うち。

そして、あの、飛んで行くところ。

(出典 未発刊)

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