神埼郡吉野ケ里町曽根 古賀フユさん(明38生)

 大晦日も日その、

「きょう(きゅう)は、大晦日は火ば絶やさんごとしとつてくれんばでけん。

いつちょん「まったく」消(きや)さんごとしとれやあ」ち言(ゆ)て、

言いなったけん、そこの姉(あんね)、下女たいなた〔ですよね〕、

その人(しっ)たんの、

「そんない〔それなら〕、私(あたし)が番すっ」ち言(ゆ)うて、

番ばして、十二時までは立派(じっぱ)に起きとったて。

そいしたばってんが、その、

どういうふうじゃいで眠(ねぶ)いなったじゃろう。

火の消えたて。

火はどうすっきゃあ〔どうするかあ〕。

もう何処(どっ)から買(こ)う所はなかとこれぇ、と思うて、

その、葬式のあいよったてじゃんなた。

向こうから来たてっちやん。

どつちしたっちゃ、あの火ば貰うて、

もう俺(おり)ゃあ、

夜(よ)さいあぎゃんと〔にあんなのを〕しとったとに、

貰おうこて、と思うて、その火ば貰うて、棺桶ば預かった。

預かろうごとなかばってん、

檀那さんに隠(かき)いて小屋の隅に置(え)ぇとったて。

そうしたりゃあ、元日の朝、檀那さんが、

「こりゃあ、何か」ち(ゆ)言うて、開けんさったりゃ〔開けられたら〕、

金じゃったち言う話たんたあ。

〔大成 二〇二 大歳の火 (cf.AT七五〇)〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P82)

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