狸汁 あすりん作

狸汁 作:あすりん

伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)男性一名

 お爺ちゃんがそん山に行って、山畑をほどきよったそうですたい。

そうしたところが、狸が、

一鍬(ひとくわ)打っちゃガックンショ

二鍬(ふたくわ)打っちゃガックンショ

言うて、もう動かんごたっそうですたい。

「こん畜生(ちくしょう)」ち、狸ば捕まえて来て、

そして足をくびってさかせぶら下げとったそうですたい。

そうしたところが、お婆ちゃんが米搗きちゅうてから、

こう、あん、米を白米にねなしてですね、搗きよらしたところが、

「こいば解(と)いてくれんかい。

そうすっと、俺(おい)が米は搗(ち)いてやるけん」

ち、こう狸が言うたそうですたい。

お婆ちゃんな自分の搗くとが、あん、きついもんだから

ほといてやったそうですたい。

そうしたところが、今度(こんだ)あ狸は婆ちゃんに化けて、

婆ちゃんの頭をつっ殺して、そうして、あの、

今度お爺ちゃんの帰って来らした時、

今度は味噌汁に煮とったそうです、お婆ちゃんを。そいで、

「お前(まい)の捕ってきた狸汁は、こけぇ煮ちょるばい」ち、

こう狸がお婆ちゃんに化けて言うたそうですね。

そうしたところが、髪毛(かんげ)のユーッと浮いてきたもんじゃいけん、

「こりゃ、家(うち)ん婆じゃなかかーあ」ち、こう言うたそうですね。

そうしたところが、今度あもう、ビックイして、

「お爺さんな、婆の味噌のお汁(つゆ)ば食べらした」

ち言(ゅ)うごたっ話ば聞いちょいました。

そいでおわり【それでおしまい】。

(出典 未発刊)

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