伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)男性一名

 猿と蟹(かに)が、蟹が大きな握飯ば持って、

あん、来よったそうですたい。

そうしたところが、猿が小(こま)か柿の種ば一つ持って。

そして猿はその、お握りを食べたいもんだから、あの、それでその、

「柿の種と替ゆうか」と言うた。

そうしたところが、

「俺(おや)、嫌(いや)」ち言(ゅ)う。蟹が言うたわけですが。

そうしたところが、今度は蟹はその、柿の種を一粒替えたもんだけん。

自分のところに持って帰って、

そして、たいへんねわって肥やしをかけて、

ダンダンめえわくなって、今度(こんだ)あ実が生ったそうですね。

そうしたところが、あん、猿は木に登って行って、

自分ばかい食べて、蟹は下におって、俺(おり)も食べたかなんか、

どうして蟹は木に登れんもんですから、そいで下におって、

どうかしていっちょ、今度あ家、お父さんたちはねぇ、

あん、枯れ枝袋は引っ掛けてゆさぶっと言うと、

柿ゃあみんな袋の中に入(はい)ってしまうとん、

家(うち)のお父さんはそぎゃんしよらしたよう」ち、

蟹が言うたわけですたい。

ところが、猿はそがん思うて枯れ枝に袋を、

たくさん柿の入った袋をかけてゆさぶったわけですたい。

そうしたところが、その袋をねずうで

穴ん中さい攻め込うだそうですたい。

そうしたところが、猿が行ってその穴の口、(汚い話ですが、)

糞ばたれたそうですたい。

そうしたところが、下から蟹(がに)のこう、

尻(しん)のすうばたにしばねずうだそうですたい。

そいでたにしは真っ赤(きゃ)しとっち、聞かせらした。

(出典 未発刊)

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