伊万里市波多津町井野尾(名前・年齢不詳)女性二名

 今日は、あの、勘右衛門がそぎゃん、

今日は村寄り合いのありよったそうですもんね。

そんところ勘右衛門さんの来て、

「今日は、あの、村ん人に珍しかごたるあがんと、

和尚(おしょ)さんば、あん、見するけんなあ」て、

こぎゃん言うて、勘右衛門が行たそうですもん。そうしたら、

「今日、和尚さんの頭半分つんでここば走ってらすけん、

あん、外ば良う見ちょってくれんかい」て、

こぎゃん勘右衛門が言うたちゅう。そいけん、

「なんの、そがんことしてえらっそうかい」

て言うて、そげん言いよらしたちゅう。

そうしたところが、あん、勘右衛門どんの和尚様のにき行たて、

「あの、和尚さんもし、和尚さんもし。

今日は村ん寄り合いのあろうとん、

頭つんで、あの、ぶっかやるけん、あん、

ちょっと外(そて)行たてみてくるっごとでけんじゃろうか」

て、こぎゃん言わすたちゅう。そうしたら、

「はい。そうですね」て言う。

そして勘右衛門さんの半分ばっかい頭ばつんでから、

「ああ、腹ん痛か、腹ん痛か」て言うて、

もうコロンボコロンボさしたちゅう。そいけん、

「俺(おや)、そんならもう、村ぎゃああるなら、

そこさい行たち、あん、和尚様ば呼ばんこて」

て言うち、走って行かしたて。

そうしたところが、村ん人の、

「あら、勘右衛門があがん言うたとのほんなこてなったぞ」

て言うち、

「おかしか」て笑うて、勘右衛門がそがん言うち、

えらきゃあたあち言うと、あの、話ば聞いたとん。

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ