伊万里市波多津町津留主屋 市丸カメさん(明34生)

 あの、大抵道ばズーッと通りよってですよ、

あのへんが、そうしてもう、お腹ん減ったかどうかですねぇ、

あすこらへんにいっちょ寄ろうかと思うて、行きよらしたわけですたい。

そして、娘さんとお母(か)さんとおらしたそうですたい。

そうしたら、その、またそのお嬢さんなきれいですね、

ちゅうた風で、もう、大抵勘右衛門さんが褒めらしたちゅう。

そうしたら、おっ母(か)さんのもう嬉しゅうしてたまらじもう、大抵。

そして、嬉しゅうなって、

「もう帰ろうか」ち言(ゅ)うてくさん。

そしたらそこに、お嬢さんが、

「帰っていらっしゃい」ちて。そいけん、

「誰か今、お客さんのいらして、大抵もう、

あん娘さんの、良か娘さん」て、褒めて行かしたて。そうしたら、

「馬鹿がその、何処まで行きよらすとか、その人は」て。

「どがん言わしたか」て。

「もう、大抵きれいかお嬢さんて。

木の上のお嬢さんのごたっ」て言わしたて。

「木の上のお嬢さんちゅうたあ、猿(さん)のこったあ」て言うてさあ、

その人を叱(おご)ろうで思うて行かしたら、そしたら、あの、

履いて靴ばどがんじゃろして、見らす、勘右衛門さんが、

「こぎゃんふうにしとらしたかあ」ち。

「そがにゃしとらっさん」ち。

そいで仕舞(しみ)ゃあなか、勘右衛門さんですたい。

偽物つくって、何ですかちゅうごたふうにさすたん。

「そりゃ、ごぎゃん風にしとらしたかあ」

「いんにゃ、そぎゃなしとらっさん」て、こいで仕舞ゃあなった。

(出典 未発刊)

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