藤津郡太良町田古里 馬場七郎さん(年齢不詳)

 むかし、善兵衛という猟師がいた。

ある朝、善兵衛は鉄砲を持って池にいる鴨を撃ちに出かけた。

池には七匹の鴨がいた。

善兵衛は一匹にねらいを定めて撃った途端に、鉄砲が木の枝にひっかかり、銃口を振った。

一度に振ったものだから、七匹の鴨に玉が当って死んでしまった。

善兵衛は、

「ああ、こりゃあ七匹も撃った」と、ひとりごとを言って、

丹前(たんぜん)を尻までまくりあげて池の中にはいり七匹の鴨を取った。

池から善兵衛はあがろうとしたら、重くてあがることができなかった。

木の枝をつかまえてあがろうとしても、なかなか重くてあがれない。

そこで丹前をぬいでみたら、鮒や鯉がいっぱいはいっていた。

こんどは善兵衛の手が震えてしまう。

これはおかしいと思っていたら、兎の後足を握って、手が震えていた。

それで善兵衛は兎もつかまえた。

兎は後足を握られて、前足で逃げようと土をかいたもんだから、山芋を掘った。

善兵衛は鴨をとり、鮒、鯉もとり、兎もとり、山芋までとり、

たいへんな得をしたというげな。

そいばっかいのばんねんどん【それでおしまい】。

(出典 佐賀の民話第一集 P221)

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