嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

峠の真ん中にねぇ、丸ーか石があったてぇ。村ん者(もん)や子供達ゃあつこに遊びに行ってさ、丸ーか石に小ん便をいっかけたいないたいしよったてよう。そいぎぃ、

「そぎゃんことしちぇやいかん。何(なん)にでん魂があっとばーい」て、言いよったいどん、そん石はもう、何てってんものばこう、言わんもんじゃっけん、そこを良かー遊び場に子供達ゃしよったちゅうもんねぇ。そいどん、そん石は日照り続きで旱魃ん時ゃねぇ、恐ろしか役目じゃったてよう。

「今年ゃ、酷か旱魃にゃあ」て、言うぎさ、そこん村ん人達ゃ手に手にバケツに水ば提げて来てさ、そん石様にお参りして、バケツの水ばガーッとかけ、ザーッてかけしてねぇ。そうして、

「どうぞ、雨の降いますように」て言うて、お祈りばしおったちゅう。

そいぎねぇ、その晩には必ずていうようによかごと、一雨降いよったちゅうよう。そいから先ゃ、その石んことば「雨乞い石」て、名前ばつけよったて。

そいで、天気の続いて日照りで困った時ゃあ、もうその石はキラキラすっごと洗われとったて。あいどん、雨の降っぎさ、もう泥埃(どろぼこい)のかかったりなんかして、もう雨の降る時ゃもう、草ん中(なき)ゃあ埋まってね、その石は畑ん中ゃあ何時(いつ)まっでんあったて。

「しかし、前は雨乞い石じゃっけんが、大切にせんば、小便(しょんべん)どんひっかくっことなんぞ」て言うて、親さん達ゃ注意しよんしゃったて。

そいばあっきゃ。

〔一〇四 自然説明伝説(石)〕
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P795)

標準語版 TOPへ