東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 師走味噌は、どういうわけで搗くことなんかということを、

この由来(ゆわれ)のあっけんなたあ。

一年前になたあ、六部さんと言うとが

行きん去ったらしかたんたあ。

そいぎぃ、そけで嫁さんが、子ば守い方で、あの、

庭んところで臼で、あの、味噌ば搗きんさったちゅう話。

そいぎ今度(こんだ)あ、あの、あの、六部さんが見よんさったところが、

その、味噌ばその、このなで(きね)でちょすっとすんもんじゃいけん、

ホッともう、(ひと)かけら飛うだちゅうもんなたあ。

そいぎ今度あ、

「あら、味噌の出たてぇろう」て握って、

その味噌ん(なき)ゃあ入れらしたちゅうもんなた。

そいぎその、(こま)かほそろが()つうにおってその、

(うんこ)までしとったですもんなたあ。

そいぎぃ、そいまでその、入れらしたていう話たんたあ。

その味噌ん中ゃあ。そいぎ今度あ、

「それゃ糞じゃったばい」ちては、

もう言われたもんじゃい、ようーしとらしたわけ。

そいぎちょうど、回いぎゃ来て、その、師走にそけぇその、

泊まらんばごとなったちゅうもんなたあ。

そいぎぃ、去年の師走にこけぇ来たいば、あの、味噌搗きのあってぇ。

その味噌どまなかろうかにゃあと思うて。そいぎぃ、

「この味噌は何時(いつ)()いたとでござんしゅうか」て言わしたてぇ。

「去年の師走、こりゃあ搗いた」て言うたてぇ。

そいぎぃ、俺が来た時、糞ば入れて搗いたとばいにゃあと思うて、

「私ゃ師走味噌いっちょうは、昔から食べんようしておりますけん、

折角のお(つゆ)いっちょしいはえません」て、ほんに言うたて話のあっ。

(出典 未発刊)

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