東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 むかしなたあ。

兵隊検査なたあ、

兵隊検査をおかしなこと言うたらしか、しよったわけぇ。

それはなたあ、体格の立派な男が兵隊検査行たちゅうわけぇ。

そいぎ、検査官が、

「学校はどこまで行たかい」て、こう言うたちゅうもんなたあ。

そいぎぃ、学校は小学まで行たやい、

高等まで行たじゃろうというところば聞いたわけぇ。

そして、字名ば、こっちすっぎその、

そのへんが内田ちゅうもんじゃっけん、

「うちだまで行きました」て、こう言うたてぇ。

片一方はどうして、小学校の何年まで行たじゃいろう。

「うちだまで行きました」て。

そいぎぃ、こりゃあもう、だちあかんたあと思うて、今度(こんだ)あ体格太かもんじゃいけん、

「職業は、(ない)ばしとっかあ」と、こう言うたちゅうもんなたあ。

そいぎぃ、今度(こんだ)あ片一方が、

「麦飯ば食べとります」てぇろうて、言うたちゅう話もあってなたあ。

そんくらいのことは昔は、言いよったちゅうもんなたあ。

そいから今度あ、慶応元年の生まれが兵隊検査に行たてぇ、

何時(いつ)生まれた」て、こう言うたちゅうもんなたあ。

そいぎぃ、慶応元年の生まれて言わすぎ良かいどん、

「きおうがんの生まれでござんすっ」

て、言うたちゅうもんなたあ。そいぎぃ、検査官が、あの、

「ふいだしゃ、落ちゃおらんかあ」て言うた話じゃんもんなたあ。

(出典 未発刊)

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