東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 昔の不便な者は、やっぱいこい頓知の早かこっちゃい、

どがんじゃいわからんちゅうごたっふうで、達者な男が初めて、

その、お医者さんに診察に行かしたちゅう話たいなたあ。

そいぎぃ、お医者さんが診察をしよって、

「あの、お(たあ)、頭痛の気はなっかい」て。そいぎか片一方は、

「頭痛の気て、頭がその、ズクズクすっ、その気はなっかあ」と、

こう、お医者さんな(たん)ねんさったわけ。

あいどん、その、不便かもんじゃっけん、

「いいえ。ずつうの木はござっせん」と、こう言うたらしかですよ。

そいぎぃ、お医者さんが、難しいにゃあ、あの、返答すっとがおかしかもんじゃい、

「こりゃあ、ならん」て、こう言いんさったてぇ。そいぎぃ、

「いいえ。ギャアギャアの(なき)ゃあ、何時(いつ)じゃいろん、

一年ごしぐりゃあにゃあ、ないますもん」

ぎゃん話もあんもんなたあ。

そう言う風なこともあんもんなたあ。

(出典 未発刊)

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