川副町犬井道十四区 徳永広作さん(明30生)

 あの、昔の大詫間土手(でえ)のごたっとの、

(じょう)(ほう)(よし)の生えとろうがあ。

そこば行きよったち。

そうしたいば、向こうからちょうどよかくりゃあの

(かく)さんの来よらしたちゅう。

親父の反物売いやったらしか。そいぎぃ、

「おりょ。ちょっとあんたあ」

「ないかんたあ」ち。

「妙な相談ばってんが、反物一反やっけん、

相談はでくんみゃあ」ち、こう相談したもよう。

(ぞう)(たん)のごと、反物一反やっけん、

一反でさせらるんもんかんたあ」ち、

その女が言うたち。

「そんない、言うたことじゃっけん、よかたい。

あいば二反やろうだい」ち()うて、

言うばってん聞かっさんちゅうもん。

そいぎぃ、二反三反、三反四反。

とうとう五反になったちゅうもん。

「もう良か。あいば五反やろう」

「五反やんなさい、うち合おうだい」て、

こう言うたち。

そいぎん、親父が乗いかかって、その、

ちょうどんとこのにきば、ほんなほげたところにゃ

当てじぃ、その上にきばきゃあこすい、

きゃあこすい、(へそ)ンにきさいばっかい

持ってくっちゅうもん。

そいもんで、女が(のち)にゃもてじぃ、

「ああ、そこそこ」ち()う。

「いんにゃ」ち言う。

また(うえ)さいずい()ぐっちゅう。

そいぎもう、そがんして欲しがらすっ分、

欲しがらせてからなたあ。

「そこじゃっかんたあ」ち。

「いんにゃあ。(おい)もたい、お前がたださすっとないば、

人のほぎゃあた穴入るっ」ち。

「あっばってん、反物五反じゃがとやっけんが、

ここの臍ンにき新しゅうほがし直そうだあ、

と思うとっ」ち、がん言うたて。

そうして、そいがほんに女の欲しが分、

欲しがらせて、冗談して欲しがらせとんもんじゃい

なたあ、終わりゃ、もう女がもてじぃ、

「もう、よかそい。反物てんなやらんてちゃ、

ただ良かけん。もう、元の(あに)ゃ入れござい」

そいけん、知恵持ちにゃ勝たんよう。

そいぎぃ、親父は反物五反の約束が、ただなっとっ。

(出典 未発刊)

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