川副町大詫間十三区 池田トメさん(年齢不詳)

 あや、ほんなことあんもんね。

ほら、昔ゃ、あの、昭和搦の土手(でぇ)の回いよったろうが。

あつこっさい行た時、あの、(はに)ゃあてやったもんね。

ほんな二人(ふちゃい)行たとらしたちゅうもんなたあ。

そうしたいばあの、女中さんの知らじ、

戸ば開けさしたいばその、二人めったしよらしたち。

そがん言いよらしたあ。

そいからあの、何処(どこ)じゃいの嫁くさんの

泊まらしたぎぃ、男と(おなご)と泊まっとったち。

そしたぎあの、親方の嫁くさんのなたあ、

宿屋の嫁くさんのあの、

「おナベ、ちょっと二階さい上がってみろ。

二階のお客さんの今のうは全く、音のしよらんけん」

ちて、言わしたいば、

おナベがドンドンドンで上がって行たて、

二階、開けよったいば、

どがんじゃい音のおかしかちゅうもん。

そいぎもう、

「どがんじゃったかい」ち、言わしたいば、

「奥さん。ほんにお客さんの猫連れて来とんさったあ」

ち。

「そがな話のあんもんかい」ち。

「なしかい」ち、あの、奥さんの聞きんさったぎぃ、

「ちょうどなたあ、猫の水飲みよっごたっ音の

しよった」ち。

「今までお客さんの来らすばってんなたあ、

猫連れて来っお客さんな一人(ひとい)でんなかったあ」ち、

その女中が言うたち。そいけん奥さんな、

「あや、なしじゃいきゃん」ち、言いなったぎぃ、

「お(まや)、知ったこっじゃなか。

お前、ようーしとっござい」ちて、

嫁くさんな言わしたち。

(出典 未発刊)

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