鍋島町岸川 中村 初さん(年齢不詳)

 仲人さんが、少し頭の足らない男に嫁さんを

世話したげな。

そして一年位したら、子供が産まれた。

そうしたら、聟さんが子供の寝ている枕元に行って、

必ず自分の持ち物と比べてみるそうな。

すると、自分の物が小さいものだから、

「がん太かとのできたとないば

(コンナニ太イ持チ物ヲ持ッテイルナラ)」と言って、

全然夜の性生活がないようになったので、

嫁さんが仲人さんに、

「がんして、子供が産まれたぎぃ、

いっちょでん近づいてくれんけん、

私は帰るろうと思うとっ

(コウシテ、子供ガ産レタラ、少シモ近ヅコウトシナイノデ、

私ハ実家ニ帰ロウト思ッテイマス。)」

と言って、相談にやって来た。

 そうしたら、仲人さんが、

「折角、子供の出来て、どうしゅうもあんもんかぁ。

そいないば、俺が近づくごと言うとくけん、

今晩、ぼた餅をしとけぇ。

そして、ぼた餅をした上、側に砂糖を置いとかい

(折角、子供ガ出来タノニ、ドウショウモナイナア。

ソレナラ私ガ近ヅクヨウニ言ウノデ、今晩ボタ餅ヲ

作ッテオキナサイ。ソシテ、ボタ餅ノ、側ニ砂糖ヲ

置イテイナサイ)」と。

「それでよかかんたぁ(ソレデ良イノデスカ)」

「俺が言うごとしとけぇ(私ノ言ウトオリニシナサイ)」

嫁さんは、ぼた餅を作った。

その夜、仲人さんが来られた。

嫁さんは仲人さんに、ぼた餅を出した。

そうしたら、仲人さんが、ぼた餅をたくさん食べて、

「こりゃあ、きしょくにうまかもんにゃ、

こがんうまかぼた餅があんもんか。こりゃあ、

一人の子持ちのぼぼしゅうごたっじゃっかぁ

(コレハ、本当ニオイシイネ。コンナニオイシイ、

ボタ餅ガアルモンカ、一人、子供ヲ持ッタ女ノ人ノ

モノハ、素晴ラシ)」と、言われた。

そうしたら、亭主が、

「一人子持ちは、そがんあろうかぁ

(一人子供ヲ産ンダラ、ソンナニアルネ)」と言った。

その夜から、また嫁さんと一緒に寝るようになった。

そんなに一人子供を産んだ女は良いげな。

(出典 未発刊)

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