川副町犬井道十四区 徳永広作さん(明30生)
その、ふうけ息子に嫁御世話したらしかなたあ。
そうしたとっが、しみちも知らん。
何も知らんちゅうもんね。そいけん、
「こいがこいがして、お前が知っとっけん、
こう言う風にして、その、させんばでけんよ」
ち言うて、その嫁御ぇいちようたて。
そうしたら、ちょんちょんしてから、ちょっとこう、
女からよい離りゅうでしたいば、もう、
こうはたげたままじゃんもんじゃいけん、こがんその、
割れとっちゅうもん。
そいぎもう、その男が世話して、
「おりょっ。家ン嬶もう、うぅ怪我しとっ。
何で怪我したやいきゃん」ち言うて、
その周いを探してみっばってん、
塩梅あゆうなかちゅうもんなあ。
そうしたいば、鉞斧ちゅうてあんもんなたあ。
あいばひいとったと。
そいのひょっとそけぇあっと。
ほんにこいでじゃなかやいきゃんと思うて、その、
嬶がてこう、当てようて。
そうしたぎぃ、ちょうど鉞斧のガサッと、
合うちゅうもん。
そいもんで、もう、たまがって、嫁御の親元もう、
走って行たち。そうして、
「家ン嬶、大怪我しとっ」ち言うて。そいぎもう、
「何で怪我したもんじゃいきゃん」ち。
「鉞斧で」ち。
「何処ばやあ」ち、世話して聞いたぎぃ、
「こぎゃん、こぎゃん」ち。
そいぎぃ、亭主なっとと二人、
急いで来よらしたちゅうもん。
ところが、ちかっとこう、クラッとからげんば
行けんごたっ、周れば橋あったばってん、
世話して行きよっもんじゃい、周らじぃ、その、
クラッとからげて、渡った。
そして、草むらでその、させたらしか。
親嬶さんが。
そうしたぎぃ、ほんにむやみ良かちゅうもんなたあ。
おーりょ、ぎゃんよかなあち、思うとっところがその、
わが息子の先の皮がなかちゅうもん。
そうして、
「ありゃあ、よかったないば悪か」ち言うて、
「ちんぽの皮のうなっとっよう。俺がたあ」ち言うて、
草むらン嬶中ゃあ、どっこい座って、
探しよったぎその、蟻の、蟻の先ばキリキリと
刺ゃあたけん、ちょっとこうすげぇたいば、
皮が被ったもんじゃい、その、
「蟻が持って来てくいた」ち、言う話。
(出典 未発刊)