川副町犬井道 徳永広作さん(明治30生)
親嬶さんと息子とおったて。
息子が嫁御ようだもよう。
そうしたとっが、嫁御が里歩きしたち。
そいぎもう、親嬶がその、
「もう、せからしか。親子で幾らでん床とろうよいきゃもう、
いっちょとって寝ていっちょこじゃっこう」ち、
言うてその、親子二人寝さしたらしか。
そうしたぎぃ、夜中ゃあなったぎぃ、
息子がどがな気の起こったこっちゃい、
ジーッとその、親嬶さんに乗ったらしかもん。
そして、親嬶さんてはめたちゅう。
そうしたぎぃ、ヒョッと、親が目ば覚ゃあてなたあ、
「誰かあ」ち、こう言わした。そいぎぃ、その息子が、
「俺。俺じゃっかい」ち、こう言わしたち。
「この、親不孝者が」ち言うて。
「そんない、抜ごうかあ」ち言うたて。
「今のう抜ぐない、まあーだ親不孝じゃろう」ち。
せっかく、嬶さんな後家して当たいよったたあ、
て思うて、もってきて、
「抜ごうかあ」ち言うない、そいよい親不孝はあんもんかい。
(出典 未発刊)
標準語版 TOPへ