富士町中原 吉富鶴子さん(昭6生)
むかし。
お母(か)さんの言うことば、
「あやん」ち言(ゅ)うぎぃ、
「こやん。こやんせろ」ち言うぎぃ、
「あやん」。
もう変ちくりんのビッチョン【蛙】のおったて。
そいぎぃ、嬶(かか)さんの、その、
俺(おい)が死んだこんな、あの、
こいが変ちくりんばっかいすっけん、
川(かや)あ埋けっくいろて言うたこんな、
山(やみ)ゃあ埋けやすんみゃあかにゃーあ、
と思うて、お母さんの、その、
「俺が死んだこんな、川あ埋けっくいろやあ」て、
その、言うて死んどらしたてったい。
そしたぎビッチョンが、その、ほんなこて
お母さんの遺言ば一遍な聞かんごてぇと思うて、その、
「『川あ埋けっくいろ』て、言わしたけんが、
今度(こんだぁ)お母さんの言うことば聞かんごてぇ」
ち言うて、川あの隅ンくらにき埋けらしたて。
そいけん、いつうでんビッチョンが雨の降っぎぃ、
嬶さんの流れは、さすんみゃあかあと思うて、
「ビッキー嬶(かっか)あ、流(なんが)れやんな、
ビッキー嬶あ、流れやんな」ちて、
ありゃビッキーは嬶さんの流れらすとば、
「流れやんな」ち言(ゅ)うて、
ビッキーは鳴くとてったい。
そいが先ゃばあっきゃ。
[大成 四八 鳶不孝]
(出典 未発刊)
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