佐賀市大和町松梅地区(仲)山本清吾さん

 むかぁし、あるところに、

おそろしか大きな屁をふる娘さんがおったそうですもんね。

そいけん、親父さんから、「お前は、今んごと屁ふいよんない、嫁の口ぁなかばい。嫁どん行くならば、屁は絶対ふっごたぁならん」ていうことを言われてね、がまんしよったぎ、始めて良縁があって嫁にいたて。

そうしたところが、屁ふろうごとしてこたえんばってん、たいてい我慢しとるうちに、健康を害して、顔色の青うないかけて、青うなったり白うなったいすんもんじゃい、姑母(かか)さんが、

「おとんな(お前は)、どがんじゃありゃぁせんかん」

「ちぃっと(少し)ばっかい、あったんた」

「ないのあっかん」

「屁ふろうごたったんた」

「屁ぐりゃぁ、遠慮なしぃふいやい、ふいやい」

「ふってよかろうか」

「うん、よか、よか。屁ぐりゃぁ、よかくさい」て言いなった。

 

屁ふり嫁

屁ふり嫁

そいぎ、

「そいないば、屁はふっばってんが、棚ん上の皿茶碗ごたったぁ片づけとってくんさい」

「なぁんかん、よか、よか。片づけんてちゃ」て言うて、そのまましとったところが、その嫁さんが、

「そいないば、御免ください」て、屁をふったところが、たちまち、皿茶碗でん、ガチャガチャガチャ落(うっ)ちぇえてしもうた、ていうわけですもんね。

そいで、

「こがん屁ふっごたぁ嫁は、家(うち)ぃおかれん。もう、離縁、離縁」て言われて、帰って来よっ途中に、焼き物屋さんが、駕籠ば降りぇぇて、梨の木ばしきりにながめよいなったて。

そいけん、

「ないしよっかんた」て聞きなったぎ、

「うん、あすけぇ、梨のうまかろうごとしてなっとっけん、あいば、いっちょ(一つ)にゃぁて、思いよったたんた」、

「なぁん、あがんとや。あがんとない、屁ででん落としゆっくさんた」、

「屁で落ちるもんかん。手でなしゃぁ、採るっわけなかろうもん」、

「いんにゃぁ、あいなら、屁ででんよか。そいないば、私(あたい)が落てぇてみゅうか」、

「お前が屁で落としゆんない、この焼き物ばすっぴゃぁ(全部)お前にやろうだい」ていうことになったもんじゃい、その嫁さんな、尻ばひっぴゃぁで(着物の裾をはだけて)、梨の木の方に向けてふったところが、梨のボテボテボテて落ちてきたて。

そいぎと、どっさい落ちてきたけ、

「もう、そんくらいでよか」て言うて、その焼き物屋さんが、梨ば食いよっはじゃぁ(間に)、もう嫁くさんな、もう約束はしとっもんじゃい、荷物をいのうて(背負って)、さっさと帰ってはしんさったていう話。

そいでばっきゃ(それでおしまい)

(出典 大和町の民話 P27)

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