屁ふり嫁

屁ふり嫁さんと焼きもの屋さん

佐賀市大和町松梅地区(仲)山本清吾さん

むかぁし、あるところに、

すごく大きな屁をふる娘さんがいたそうです。

だから、親父さんから

「お前は、今んごと屁ふいよんない、嫁の口ぁ【嫁の貰い手】なかばい。

嫁どん行くならば、屁は絶対ふっごたぁならん」と言われて、

我慢していたところに初めて良縁があって嫁に行ったそうです。

そうしたところが、娘は屁をふりたくて、かなり我慢しているうちに、

顔色が青くなったり白くなったりしていたから、姑母(かか)さんが、

「お前(とん)な、どがんじゃ、ありゃあせんかん」と聞いた。

娘「ちぃっと【少し】ばっかいあったんた」

姑母さん「ないのあっかん」

娘「屁ふろうごたったんた」

姑母さん「屁ぐりゃあ遠慮なしぃ、ふいやい、ふいやい」

娘「ふって良かろうか」、

姑母さん「うん、良か良か、屁ぐりゃあ良かくさい」と言われました。

そして、

娘「そいないば屁は、ふっばってんが棚ん上の皿茶碗ごたったぁ、片づけとってくんさい」

姑母さん「なぁんかん、良か良か片づけんてちゃ」と言って、

そのままにしていたところ、その嫁さんは

「そいないば御免ください」と屁をふったところが、

たちまち、皿や茶碗などがガチャガチャガチャ落ちてきてしまったわけです。

それで、

「こがん屁ふっごたぁ嫁は、家(うち)ぃ置かれん、もう離縁、離縁」と言われて、追い出されました。

娘は実家に帰る途中、焼き物屋さんが駕籠(かご)を降ろして梨の木をしきりに眺めていました。

それで娘は、

「何(ない)しよっかんた」と聞いたところ、

焼き物屋さん「うん、あすけぇ梨の美味かろうごとして成っとっけん、あいば一(いっ)ちょにゃあて思いよったたんた」

娘「なぁん、あがんとや。あがんとない屁ででん落としゆっくさんた」

焼き物屋さん「屁で落ちるもんかん。手でなきゃあ採るっわけなかろうもん」、

娘「いんにゃあ、あいなら屁ででん良か。そいないば、私(あたい)が落てぇてみゅうか」

焼き物屋さん「お前が屁で落としゆんない、この焼き物を全部(すっぴゃあ)お前にやろうだい」

と言うことになったので、

その嫁さんは着物の裾をはだけて梨の木の方に向けてふったら梨がボテボテボテと落ちて来たそうです。

それで、たくさん落ちてきたので、

「もう、そんくらいで良か」と言って、その焼き物屋さんが梨を食べてる間に、

嫁さんは約束していた荷物を背負って、さっさと帰ったと言う話。

そいでばっきゃ【それでおしまい】

(出典 大和町の民話 P27)

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