佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかーし。

姑さんのね、おはぎばね、たくさん作ったて。

そうして、余ったもんじゃい、戸棚の中に入れて隠しとんさったて。

そいで、姑さんな、嫁さんに食べさしゅうごとなかもんじゃい、

帰ってきてから、自分一人(ひとい)食びゅうで思うてね、

戸棚に入れてなおしとんさったて。

そいで、行く時にね、コソーっとね、重箱の中のおはぎにね、

「もし嫁さんが開けたら、蛙になれ」て言うて、出て行きんさったて。

そいぎぃ、そいば、嫁さんが、こそーっと、聞いとんさったて。

そいで、はあ?て思うてから、蛙ば、いっぱい取ってきてね、

おはぎばみーんな食べてね、代わりに蛙ばいっぱい詰めとんさったて。

そいぎぃ、お姑さんの帰って来て、おはぎは食われとらんやろか、て思うてね、

開きゅうでしんさったぎぃ、中から蛙のいっぱい出て来たて。

そいぎぃ、

「私(あたし)ゃあ、『嫁くさんの見た時に蛙になれ』て、言うたばってん、

こりゃあ、しっきゃあ【全部】蛙になってしもうとっばい」ち言(ゅ)うたて。

そいけん、嫁さんにみんな食べられて、とうとう姑さんの食べるのはなかったて。

嫁さんの方が、気の利いといなったて。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

 

(出典 さが昔話 P34)

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