小城市芦刈町川越 篠原初一さん(年齢不詳)

語り おはなし会三日月 本村美恵子さん
 むかし、むかし。

あるところにきれいな娘が住んでおりました。

その娘のところに一人の若い侍が忍んで毎晩来ていました。

両親は、若い侍が忍んで娘のところに通っているけれども、

どこの人だろうか?どうもおかしいと心配していました。

心配のあまり、とうとう娘に、

「今晩、あの若い侍が通って来たら、針に糸を通して、三針通しておけ」

と、言いました。

娘は、あの若い侍がやって来たので、

両親から言われたように、針に糸を通して三本を裾にさしました。

若い侍が帰って行くと、父親はその糸をたどって後をつけました。

糸は、ある池の中に入っていたのです。

後をつけていた父親は、どうも不思議だと思いました。

すると、蛇同士が、

「あの娘は、もう身ごもっている。

三月三日の桃の節供のお酒を飲まないと自分の蛇の子供が生まれる。

お酒を飲むと流れてしまう」と、話し声が父親の耳に入ったのです。

父親は驚きましたが、良いことを聞いたと思いながら家へ急いで戻りました。

父親は三月三日の桃酒のことを家の者に話をしました。

やがて、三月三日が訪れました。

桃の花びらを酒にうかべて娘に飲ませたら、蛇の子供は流れてしまったのです。

それから、三月三日には必ず桃酒を飲むようになったと言うことです。

(佐賀の民話第一集 P126)

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