有田町泉山 池田忠一さん(明34生)
あの、有田はですねぇ、職人がねぇ、あの、職人の部屋ちゅうとはねぇ、
あの、大体、六畳に納戸と四畳ぐらいの二間(ふたま)ぐらいが多いんです。
台所は裏にちょっとくりゃみたいなものがあって。
便所も外にある。全部外にある。
そいで部屋ちゅうとは、普通の職人の所はね、
あの、一(ひと)部屋と納戸が一部屋。
そいでちょっと、子供がいくらでも生まれるわけですよ。
ところが、一日(ついたち)十五日、昔は休みですねぇ。
(今は日曜たんび休みますけども。)
そして、たまたま一日十五日、まあ、休んでねぇ、
嫁さんは洗濯か何か流してる。
親父は、いっぱい飲みよるわけです。
ところがやっぱいこう、めったにゃ昼間会わんもんだから、
「いっちょやろうかにゃあ」言うわけですねぇ。
たった今、やろうごとしよっところに、小学校の五年生ぐりゃいとの、
「ただいま」ち言(ゅ)うて、帰って来っ。
折角、乗ろうで思うとっとこれぇ。
そいぎぃ、嫁御がですねぇ、味噌漬け握飯(にぎめし)を握ってね、
「ほら、弁財天(べんじゃあ)さんに、遊(あす)いや行(い)たて来い」ち。
「ああーい」ち言うて、遊いや行くわけですたい。
向こうからもこっちから握(にぎ)い飯(めし)持って出て来っ。そいぎぃ、
「わがどまちょんべしよらす」と、知っとるわけよ。
(出典 未発刊)