有田町泉山 池田忠一さん(明34生)

 そいからねぇ、昔あの、

絵描き座に彩(だみ)習(なら)いておりましてねぇ。

轆轤(ろくろ)見習いも十三、四から。

小学校の昔四年生卒業すると彩習いなるわけですねぇ。

明治の中期ですねぇ、二十年ぐらいねぇ。

その頃になりますと、十三、四の彩習いが沢山できるわけですねぇ。

そい、絵描き見習いと。

ところがその、彩習いにねぇ、あの、もう四、五年も出しますと、

毛十六て言いますか、メンスがあったりないすることがあったでしょうが。

そうすっと、絵描きのおばっちゃん達がですねぇ、

「お前(まい)、嫁くさんになろうでちゃ、もう皿ば洗わんば、もういかんばい」

結局、処女膜を破ることを皿洗いて、こっちては言うんです。

そいで、優しゅうですねぇ、そいを割ってくるっとの、こっちからおらした。

皿洗い父(とっ)たんておりましたねぇ。

昔は、その人に頼めばねぇ、怪我せんように、ちゃーんと割ってくれるわけよ。

タオルを、日本手ぬぐいをお礼にやって、

「あいがとうござんすっ」

そりゃねぇ、家(うち)におシオと二人(ふちゃい)皿を割られに行たもんのう」

て、言わすもんのう。

皿洗いて、二人一緒に行たちゅう。ちあゃーんと、言いふくめるわけですな。

そいからですねぇ、男がですねぇ、初めてそのねぇ、

女にかかっておろたえんようにですねぇ、教育をすると、女は。

そいを筆おろしという。

そいがねぇ、皮かぶいの取れじねぇ、そいがわかって手術せんばこりゃいかんと。

そいどん、そいが酷うその、まあ興奮した時ゃあ、自分でその、破れてその、

手術せんでよかごとあっそうですねぇ。

皿洗いちゅうとは、一つの有田の風習ですね、昔から。

そいが女の始まりで。今度(こんだ)あその、恋愛になるわけ。

恋愛中は、「つけおうとらす」ちゅうですね。

あるいは「シャンスしとらす」ちゅうですね。

(出典 未発刊)

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