新村 (語り手・年齢不詳)
ちっと生まれたけん、ちょうたんち、名ば付けたち。
そいぎぃ、ちょっと肺炎でちい死んだち。
「こや、いかん」ち。
「『ちょうたん』ち、
付けたもんじゃい、ちっとで、ちい死んだ」ち。
「今度(こんだ)、檀家の和尚さんに行ったて、
名ば聞いてよか名ば付けんば」ち。
そうすっと、
「そがんしてくいござい」ち。
そいぎぃ、また生まれたちなたあ。そいぎぃ、
「和尚さん、和尚さん」ち。
「ないかんたあ」ち。
「ややが生まれたけん、よか名ばいっちょ、
あんた書物ば調べて付けてくんさい」ち。
そいぎぃ、
「よしよし。俺(おい)が調べてやったん」ち、なたあ。
「よか名ば付けてくんさい」ち。そいぎぃ、
「よかよか」ち。
「そん時ゃ、よか名ちいうぎん、どういうふうやろうかあ」ち。
「ジュウゲムジュウゲム」ち。
「『ジュウゲムジュウゲム』ち、
言うぎぃ、どういうわけかんたあ」ち。
「一から十までよかとが、ジュウゲムジュウゲム」ち言うち。
「後光ノスルキレもよか」ち。
そいぎぃ、後光のすりきれち。
「スンゲバチノスンゲバチ、パリポパリポポポンノポン太郎」ち、
こう言うたらちなたあ。
「スゲバチノスンゲバチ」は、どう言うことかい。
「すり鉢目のじんつるやいしとっとが、スンゲバチスンゲバチ」ち、
「パリポパリポちゅうたい、ふうに、『ポポンンンポン太郎』ち。
この世のぽいすっまで生きとっ」ち。そいぎぃ、
「どいしゅうでんなか」ち。
「えぇくそ、どうしゅうけぇ。
すっぱい和尚さん付くい」ち、言うたち。
そいぎぃ、
「どぎゃんかんたあ」ち。
「ジュゲムジュゲム、後光ノスリキレ、スゲパチノスンゲバチ、
パリポパリポポポンノポン太郎」ち、こう付けたち。
そいぎぃ、
「一時間ばっかい言わにゃん」ち。
そうしたぎぃ、そういう名付けとったぎぃ、
裏の井戸ん中(なけ)ぇ入(ひゃあ)ったち。
そいぎなとは、三間梯子は隣いさい借いげ行きないよったち。
隣の奴は先さい行たて、
「ないすっかん」ち、言うたて。
「ジュゲムジュゲム、後光ノスルキレ、スゲバチノスンゲバチ、
パリポパリポポポポンノポン太郎」ちて、
余(あんま)い長(なん)か名ば言うじゃって。
余い長か名ば付けたけん、死んじ知んたんち。
「名ばっかい何ち言うたかい」ち、言うもんじゃい。そいけん、
「そいけんが、名のよし悪しもよらん。
なの長(なん)か短(みし)かかにもよらん」
(出典 三根の民話 P141)