新町 空閑辰次さん(大6生)

 佐賀の徳善院ですね、あの、嘉瀬の方の。

あすこの時、家(うち)の親父なんか菱売りによう行きよった。

そうすっと、徳善院のそこのお寺のすぐ近くに藪んあった。

そこん所に必ずもう、狐が送り迎えするそうです。

そうすっと、たまにゃ悪戯(いたずら)してからもう、

よか時は、ほんにこう、あの、荷物の重たか時、

こう右ば担いでなんてん行きよっと、あの、後ろから来て、

ちょっとこう、天秤ば、

こう抱いてやったいなんかすっですもんね。

そいで、軽うなっさい。

そいもんやっけん、悪戯すっ時や、肩ん上乗ってからもう。

そいとまた、話しかくっらしか。

話しかけよったらしか。親父の言うことにゃ。

とにかくまた、あぎゃんことしよっ、ちゅうごたっ風で、

その、タバコどんのむとぬれぇっとして帰ってしまう、

ち言うてから、言いよったです。

そこんとこ通るとこだけ、徳善院ちてから、今でも現在。

(出典 三根の民話 P127)

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