土井内 納富正則さん(明43生)

 継子いじめをしてですね。

そしてその、その継子いじめしたあげく、

殺してまではしなかったですが、そのまあ、死んだあげくですよ。

死んだのを埋めるでしょうが、昔はよく。

埋めましたら今度あ、竹が生えたちゅうんですよ。

 そいでその、竹はちょうど、とても尺八にいい竹じゃったもんだからその、

尺八にしたと。

そいを虚無僧さんが無理に相談してですね。

そしてその、尺八にしたと。

吹いてみたところが、

 あら 恨めしチンチロリン 京の鏡もいぃやいや 京の硯もいぃやいや

と、言う風な尺八の音が出るちゅうわけですよ。

 そいで、それを、その継子いじめちゅうのはその、

まあーだお母さんがおっらしかですよ。

そいで、ちょうど、たまたまそのお母さんの所でもって、

虚無僧さんですから何処でも吹くわけですよ。

一軒一軒立ち寄って歩くんですから。そしたら、

「あら 恨めしチンチロリン 京の鏡もいぃやいや 京の硯もいぃやいや」

と、門口に立って吹く尺八の音がそれから出るちゅうわけですよ。

どうしたことじゃろうかしらんと。

 その後、いっちょんそういう気もしないがと、いうのでもって、

行って聞いてみたところが、

 ああ、もうとてもあすこの二番目の、いわゆる母親がひどい仕打ちで、

(まあ、今日で言いましたら栄養失調でしょう)。

そいで、亡くなってしまって。そして、

「ほんに、そがん言いんさっちゅうと、

竹の生えとったその竹ば、その虚無僧さんが、

『どうしてもこりゃあ、ほんに尺八によかろうごたっけん、その、相談してくれ』

と、いうことを本当の、実の母親に言うたわけですよ。すると、

「ああ、そうじゃったか」と、いうのでもってきて、

その子供さんのために自分の檀家寺に行って、お経を上げてやったと。

 その後は、

「あら 恨めしチンチロリン京の鏡もいぃやいや京の硯もいぃやいや」

という音は、出んじゃったということを、

小さい時に婆さんが話して聞かせよったですよ。

(出典 三根の民話 P88)

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