神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(明34生)
お殿さまの縁端(ばちゃ)座って、
「俺(おい)ば縁から下さい、降ろしきんない、降ろして見ろ」て、
殿さんの言んさった、ぎいとにゃいば、もう出来(できん)なか。
家来どもが、やあ、大事だの地振での、いろんな事ば言うて殿様ばその、
上から下さい降ろそうでてすっぱってん、びっくいともせんで、
どっかいと座っといなっ所へ、ソロリが、はあ、行って
「上からお殿様ば、下には降ろしきらん。下におんさ、お殿様ば上さいなあげき」
て、ソロリが言うなもんじゃい、お殿様の
「そんなら上げて見ろ」て、
お殿様の下に降りて行きんさっきとにゃいば、
「ほうら、お殿様降りたではないですか」。 てソロリが言うたて話。
(出典 未発刊)