神埼町平ヶ里 吉岡初次さん(明38生)

 若嫁くさんが子供を手引いてさい、里帰りしんさったて。

子供ば、もう非常に婆さんたちがかわいがって。

そして、子供にもう食べさせて。

そして、三日、四日なんもんじゃい、

『もうにゃあ、いっちょう、帰らじゃごてない』

ちゅうごたふうで、

「婆(ばば)しゃん、また来っばい」

ちゅうてから、嫁さんの

「お母さん、帰えろい」ちて。そいぎ、

「今のうから帰えよったこんなぁ、暗うなろうだい」ちて。

「暗うなったっちゃ、もうあんまい夜、こう、ご馳走食うぎとにゃ、

もう、何(ない)もかいも腹の太って、もう早う帰ったがまし」。

ところが、手引いてずうっと、帰って来よらしたところ、子供が、

「おしっこしゅうごたっ。ぱぱたりゅうごたっ」ち。そいぎ、

「どがんすっか」こりゃあ、

家(うちゃ)あもう、餅まで、米なんのてやって。

そして、よそのうんこば貰うて来ないよっと。

ところが、そいないばと思うて、きわの畠のいもの葉を取って。

そうして、その

「そげんせろ」ち、させて、そうして、立派包(つつ)んで。

そこんにきの、また、太か蓮(れん)の葉ば取って、包んで、

大事にして持って、家(うち)に帰んさったて。

ところがちょっと、わがも、あんまいご馳走(つとう)食べとんもんじゃい、

子供ば寝きゃあて。そうしてその、

芋の葉に包んだうんこは門口(かどぐち)においとって。

そして、わが、それを済まして。

そうして、久しぶり帰ったけん、

このさい、まぁ、寝じゃあちゅうごた風で、したところが、その晩に、

やっぱい、若(わっ)か嫁さんなぁ、もう、四日もおらんぎ、ちいった朝寝しなっ。

なしこっちゃい知らんばってん。

そうしょいたところが、そこの婆さんが、早よう起きて、

そうして、ちよっと、表の戸を開けたところが、

門口に大事に包(つつ)うだとのあんもん。ありゃ、こりゃあ良かったぁ。

もう、家(うち)は味噌のきれよっとこれぇ、

ほんに、こりゃあ味噌ば貰うてきゃったもんたぁ

と思うて、その朝、それをおつゆに入れて、そうして、おつゆ作って、

もう、そがんしよらしたところが、嫁さんが朝寝して、気の毒しゃもう、

おろたえて起きて、そうして、

「ほんに済まんじゃった」と言うて、しよらしたところが、

そのおつゆは、野菜はちよっと、もう、立派入れてやって

ところが、どうもこう、臭いの違うて。

よっぽど良か味噌じゃろうと。

婆さんのおろたえて、起きんなかうち早よう、言うた風で、

おべつかじキュッを飲んで、そして、嫁さんが起きて

来らしたところがもう、表ん口、ウロウロウロしよらす。

なしじゃろうかにゃあ、と思うて、

「早う、ほうーら、おとんの貰うて来た、あの味噌はもう、ちゃあーんと、

ふけぎゃんしとっ」ち。そいぎ、

「あらー!!どうしょいか!!」言うて、

「こりゃあ、大失敗した。どうも済みません」

ちて、頭ばかすいかすい、

「私ゃ、一杯お世話なっとっ」て、こう言うて。

婆さんの言いんさっもんじゃい、もう、

なかなか気の毒かようでがんさったとまぁ、それまでやろう。

(出典 未発刊)

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