神埼市千代田町城田迎島 島イサさん(明21生)

  むかし、大工さんが仕事に行っていて、

綺麗な女の人に惚れて嫁さんにしたそうです。

そうして、子供も生まれたそうです。

ある時、大工さんが、仕事に出て、

忘れ物か何かで、家に戻ってきたら、

夏の日だったので、暑かったんでしょうか、

嫁さんが大蛇になって、子供を抱いて、昼寝しとったそうです。

鱗のいっぱいある大蛇になって。

それで、びっくりして、

「大蛇のお前といっしょには居られんけん、別れてくいろ」と言ったら、

大蛇が、別れ際に自分の片方の目を取って、箱の中に入れて、

「子供の遊び物に」と言って、くれたそうです。

そうして、

「どこてぇろの【どこかの】池に、おる」と言って出て行かれました。

それで、子供が泣いた時は、箱で遊ばせていたので、

本当におとなしかったそうです。

ところが、ある時、お父さんが、その箱の中を開けてみたくてたまらなくなり、

こっそり、空けてみられたそうです。

そうしたら、箱の中から、目の玉が飛び出てきたので、

急いで蓋を絞めたけれども間に合わないで、

目の玉はどこかに飛んで行ってしまったそうです。

そうしてら、子供が、朝も泣くし、晩も泣くしで、一向に泣き止まないので、

どうしようもなくなり、大蛇がいると言った池に行って、

「子供が、朝の晩もずーっと泣いて、どがんしゅうもなか」と言ったら、

大蛇が池の中から出てきて、もう一方の目も取って、

また箱に入れてやられたそうです。

そうしたら、また、子供が少しも泣かないようになったそうです。

ところが、大蛇は、目を両方ともやったので、

目が見えないようになったものだから、

「もう、朝か晩がわからんごとなったけん、鐘ばならすようにしてくれ」

と言ったので、それから、朝と晩に、お寺の鐘を突くようになったそうです。

昔は、朝晩、お寺の鐘が鳴っていましたよ。 

(出典 千代田の民話 P141

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