幻の魚エツ（刃形魚）
佐賀市諸富町浮盃 中島義作さん（明36生）
筑後川にいるエツの話です。
弘法大師が諸国巡業をなさって、こっちに来られた時に、
大雨が降り、雨風で非常に難儀なさったそうです。
その時に、溺（からみ）から福岡へ渡ろうとされた時に、
雨風が強く、渡す人がいなかったそうです。
それから、貧しい猟師の家に寄って、
「あのぉ、渡してくれんじゃろうか」と頼まれました。
すると、
「そがんして、お困りじゃろう」と言って、
そこの老夫婦が、親切に嵐の中を渡してくれたそうです。
そして、川の途中で、老夫婦は
「本当（ほん）に、ここら辺は、魚がおらんで困る」と話しだしました。
弘法大師は、
「あぁ、そうか、かわいそうに」と、
生えている葦（よし）の葉を採って川の中に流しました。
それが、
「今のエツの魚になった」そうです。
それで、
「エツは、ここだけにしかおらん」と言う話を聞いてます。
（出典 新佐賀市の民話 P37）
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