神埼市千代田町千歳黒津 深堀鉄次さん(明34生)

  むかし、万という人がいたそうです。

ある時、野狐(ヤコ】が化けているのを知っていたから、騙されたふりをして、

「旦那さん、旦那さん」と言って、

野狐をおだてて、飲み屋に連れて行ったそうです。

そうして、飲んだり食ったりして、たいそう、酔っぱらってから、

万さんは、すぱっと帰ったそうです。

ところが、飲み屋の主人が、

「れじぃ【えらく】、飲むねぇ」と言っていたら、万さんはいなくて、

野狐が、最初は、立派に人間に化けていたのに、

酔っぱらった後は、野狐の姿で、そこに寝ていたそうです。

それで、野狐は、飲み屋の主人から、外に叩き出されたということです。

それで、野狐が、

「もう、万には勝たん」と言ったという話です。 

(出典 千代田の民話 P181

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