神埼市神埼町大門 八谷勘三さん(24)

 むかし。

浦島汰郎叱いう漁師のおったてっじゃん。

そうしたら、帰ないよったいば、子どんがな

なた、〔あんなに〕太か亀ば取って、もう遊い物(あすいもん)にしよったて。

そうしたいば、そん時ゃあ、

「なし〔なぜ〕、そぎゃんすっかあ〔そんなに〕」ち。

「俺(おい)がそんない〔そんなら〕銭(ぜん)ばやっけんが、逃がさい〔逃がしなさい〕」

ち、浦島太郎が言うたて。そうしたいば、

「そんない、やろうだい」ち言うて、やったて。

そうしてから、その子どんが帰ったて。

そいから、何時(いつ)じゃい漁しぎゃあ行たとったら、

その亀が来て、あの、背中(こうぼう)ば差い出(じ)やあたげな。

そいぎい、それ〔亀に〕乗って龍宮城さい亀が連れて行たて。

そうしてもう、いろいろ、乙姫さんち言う人(ひつ)たんな、いろいろお御馳走して、もてなしないよったて。

そうしたいば、もう、ちょつと何(なん)でんが、もう、なかもんななしもう〔ない物はない(何でもある)〕、

いよいよ極楽で暮らしないよったぎとは、家(うっ)たい帰ろうごとなったて。

玉手箱ば、おみやげにくいなったて〔くださった〕。

そうしたいば、亀が連れて来たいば、家(うち)さい帰ったいば、

家(うち)さい帰ったいばのう、もう何(なーい)でんなか、

裏の人(ひっ)たんたちも誰(だーい)でん知らん者(もん)ばかいやったて。

そうしたら、そがん〔そのように〕言いよったぎと、

聞いたっちゃわからんじおったぎな〔おったそうな〕。

そいぎもう、わがもう、余(あんま)いあげん〔あんな〕とじやったけんがなた、

玉手箱ばその、開けてみさしたて〔みられたと〕。

そうしたいばもう、(あげんと、宝物もやってやんもんじゃいその、わがもう、

ちょっと裕福になったやろう)玉手箱ば開けてみたいば、

わが、まあーだ若(わっ)かごと思とったら、こう〔すごく〕白髪の生(は)えて、

ちょっとあがんとやったち(ゆ)言う。

そいばあっきゃたんたあ【それでおしまい】。

〔大成 二二四 浦島太郎 (cf.AT四七〇、四七一)

 (出典 吉野ケ里の民話 P100)

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