神埼市神埼町大門 八谷勘三さん(明24生)
むかし。
浦島汰郎叱いう漁師のおったてっじゃん。
そうしたら、帰ないよったいば、子どんがな
なた、〔あんなに〕太か亀ば取って、もう遊い物(あすいもん)にしよったて。
そうしたいば、そん時ゃあ、
「なし〔なぜ〕、そぎゃんすっかあ〔そんなに〕」ち。
「俺(おい)がそんない〔そんなら〕銭(ぜん)ばやっけんが、逃がさい〔逃がしなさい〕」
ち、浦島太郎が言うたて。そうしたいば、
「そんない、やろうだい」ち言うて、やったて。
そうしてから、その子どんが帰ったて。
そいから、何時(いつ)じゃい漁しぎゃあ行たとったら、
その亀が来て、あの、背中(こうぼう)ば差い出(じ)やあたげな。
そいぎい、それ〔亀に〕乗って龍宮城さい亀が連れて行たて。
そうしてもう、いろいろ、乙姫さんち言う人(ひつ)たんな、いろいろお御馳走して、もてなしないよったて。
そうしたいば、もう、ちょつと何(なん)でんが、もう、なかもんななしもう〔ない物はない(何でもある)〕、
いよいよ極楽で暮らしないよったぎとは、家(うっ)たい帰ろうごとなったて。
玉手箱ば、おみやげにくいなったて〔くださった〕。
そうしたいば、亀が連れて来たいば、家(うち)さい帰ったいば、
家(うち)さい帰ったいばのう、もう何(なーい)でんなか、
裏の人(ひっ)たんたちも誰(だーい)でん知らん者(もん)ばかいやったて。
そうしたら、そがん〔そのように〕言いよったぎと、
聞いたっちゃわからんじおったぎな〔おったそうな〕。
そいぎもう、わがもう、余(あんま)いあげん〔あんな〕とじやったけんがなた、
玉手箱ばその、開けてみさしたて〔みられたと〕。
そうしたいばもう、(あげんと、宝物もやってやんもんじゃいその、わがもう、
ちょっと裕福になったやろう)玉手箱ば開けてみたいば、
わが、まあーだ若(わっ)かごと思とったら、こう〔すごく〕白髪の生(は)えて、
ちょっとあがんとやったち(ゆ)言う。
そいばあっきゃたんたあ【それでおしまい】。
〔大成 二二四 浦島太郎 (cf.AT四七〇、四七一)〕
(出典 吉野ケ里の民話 P100)
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