神埼市神埼町駅ヶ里 米倉セイさん(27)

 むかし。

二人がかいで行たとっぎい〔(椎拾いに)行っていたら〕、

ひとりんとは袋いっぱいなったばってん、ひとりんとは溜らんちてなた〔溜らなくてですね〕。

そいぎとにゃ〔そうしてね〕、その、なしか〔なぜか〕ち言(ゆ)うぎい、

ひとりんとは、袋の破れとったて。

ほげとつたけん〔穴が開いていたから〕溜らんて。

ひとりんとは沢山(どっさい)溜ったて。

そいぎい、その溜った人は、

「余(あんま)い余計(ゆんにゅう)溜ったけん」ち言うて、

その、えぇ、そこの辺(あた)りにお宮のあった所(とこれ)ぇ、泊まいいぎゃ行かすなた。

そいぎい、泊まらすぎにゃ、泊まらせらいて行かすぎにゃ、

お宮の主こっちゃいろう、〔かでしょう〕

「そこは泊まったよかばってんが、遅(おす)うなっぎぃ〔なったら〕、

その、鬼の出て来っけんが、泊まらせられん」ちて、言いなったて。

「そいばってん、鬼の出て来たっちやよかけん〔来てもよいから〕、泊まらせござい」

て、言わすもんじゃい、

「そんない泊まってよかたい〔いいですよ〕」ち言うて、

言いなっぎんと、泊まっとらしたて〔ていたと〕。そいぎぃ、

「そいば取いぎゃ〔それを取りに〕来た時は陣八と何じゃい竹のこたっとば〔ようなのを〕、

寄せてくるっ〔くれる〕」ち、言いなったじゃろう。

そいぎぃ、寄せといなったぎと、そいぎいっちょでん〔少しでも〕違わん、もう、

遅(おす)うなったぎぃ、その恐ろしか鬼どんが攻めて来たて。

その袋ば取いぎゃ。

そうしたぎぃ、袋ば取いぎゃ来らしたもんじゃい、その陣八ばバタバタ叩(たち)ゃあて、

「コッケコー、コッケコー」て、叫(おら)ばしたて。

そうしたぎい、鬼どま〔たち〕、えぇ、夜の明くっばい〔明けるだろう〕と思うて、

その皆ちん逃げて走ったち言う。そいけんがその人(ひっ)たんな、うぅん、

鬼から攻められじよかったち。

もう一人(ひとい)とが、またんたび〔次の機会に〕、そがんして〔そのようにして〕行たてっちゃん〔行ったそうです〕。

また、袋持って、「泊まらせてくいござい〔ください〕」て、行たてっちやん。

そいぎい、そがん、ちょうど元んごと、お宮の番人さんの言いなったぎとにゃあ、

元んとが言うごと言うて、泊まっとらしたぎぃ、そがんして来たち。

そしたいば、いっちょでん違わんごと来たもんじゃいけん、

その人のちょうど、陣八ば叩(たち)ゃあて、

「コッケコー、コッケコー」て、言わしたちて。

そうしたぎにゃあ、言わす間〔やーだ〕よかったばってんが、もう今度(こんだ)あ、

鬼どんが逃ぐっばいと思うて、逃げかけたもんじゃい〔ものだから〕、うぅん、

「クスクス、クスクス」笑わしたちて。

そいぎい、鬼どんが耳入って、

「こやあ〔これは〕、ぎゃんと〔こんなのは〕鶏じやなか〔ない〕」ちて、

立ち返って、えぇ、そのわいば〔お前を〕全部(しっきゃ)あして、むしい〔むしり〕殺(これ)ぇたあちて。

そいぎぃ、そいばあっきゃあ。

そいけん〔それだから〕、人真似すっぎいかんちて。

〔大成 一二二 栗拾い (AT四八〇)〕類話

 (出典 吉野ケ里の民話 P89)

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