神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(34)

  むかしなたあ。

裏の畑で犬が、「ここ掘れ」て、鳴くじゃんね。

そいけん〔それだから〕掘ったところが、小判がたくさん出てきたて。

そいぎい、意地悪爺さんが、ポチば借って、掘ってみなさったぎい、

泥水てん〔とか〕瓦のこたっとばっかい出たてなたあ。

そいぎい、犬ば殺したもんなたあ。

そして、よかお爺さんの可愛そうに思って埋けたぎと、

そけえ松ば植えんさったて。そうしたぎと、松のずんずん大きくなってなたあ。

そいで、臼(うす)ば作ったて。

そいで、餅ば搗(ち)いたぎい、また小判の出てきたて。

そいぎい、またその臼ば、意地悪爺さんの借って、

そぎゃんさしたばってんが〔されたけれども〕、

小判出てこんもんじゃい、焼かしたて。

よか爺さんの、その灰ば木に振らしたぎぃ、枯れ木に花の咲いたて。

そして、木に登って灰ば振らしたぎぃ、また、花の咲いたて。

そうして、意地悪爺さんの振いなったぎい、

殿さんの目から顔から灰だらけで、くう〔すごく〕怒(おご)られたて言う話。

〔大成 一九〇 花咲爺 (AT六五五)

 (出典 吉野ケ里の民話 P81)

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