神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(明34生)
むかしなたあ。
裏の畑で犬が、「ここ掘れ」て、鳴くじゃんね。
そいけん〔それだから〕掘ったところが、小判がたくさん出てきたて。
そいぎい、意地悪爺さんが、ポチば借って、掘ってみなさったぎい、
泥水てん〔とか〕瓦のこたっとばっかい出たてなたあ。
そいぎい、犬ば殺したもんなたあ。
そして、よかお爺さんの可愛そうに思って埋けたぎと、
そけえ松ば植えんさったて。そうしたぎと、松のずんずん大きくなってなたあ。
そいで、臼(うす)ば作ったて。
そいで、餅ば搗(ち)いたぎい、また小判の出てきたて。
そいぎい、またその臼ば、意地悪爺さんの借って、
そぎゃんさしたばってんが〔されたけれども〕、
小判出てこんもんじゃい、焼かしたて。
よか爺さんの、その灰ば木に振らしたぎぃ、枯れ木に花の咲いたて。
そして、木に登って灰ば振らしたぎぃ、また、花の咲いたて。
そうして、意地悪爺さんの振いなったぎい、
殿さんの目から顔から灰だらけで、くう〔すごく〕怒(おご)られたて言う話。
〔大成 一九〇 花咲爺 (AT六五五)〕
(出典 吉野ケ里の民話 P81)
標準語版 TOPへ