神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん (明34生)
むかし、むかし。
爺さんとお婆さんとおって。お爺さん、山へ柴刈りに行かす〔行かれた〕。
そして、お婆さんは川へ洗濯しに行かす。そして、そこん(そこん)所ぇ(とこれぇ)、
大きな桃が流れてきたち。そいぎい、そん婆さんが拾いあげ家(うち)へ帰って。
そして、山からお爺さんが来てから、あの、割ろうとして、
そいが(桃が)二つに割れて、そのなたあ、子が出てきた。
桃から生まれたけん(から)、桃太郎と名ば付けなった。
そして、その、
「鬼征伐に行くばってん、団子ばこしらえてくいろ(くれ)」て、婆さんに。
婆さんが、そいぎぃ、こしらえてくいなっちゃん〔くれたから〕、鬼征伐に行くけんが。
犬が、「私にも一つください」て。そして、つんのうて(ついて)行く。
また猿ついて行こう。そいから推子も。
そいぎい、ずっと行っぎぃ〔行くと〕、鬼征伐に行くぎにゃ、やっばい犬が扉ば
開くったい。〔開けたと〕。猿がどぎゃんじゃいすっかい〔どんなにかする〕。
推子が上からこうなた。そいぎい、もう鬼も負けたじゃろなた〔でしょうね〕。
そいぎい、鬼も負けたけん(から)、そいぎ宝物(たからもん)よ(を)、
みんな取ってきて車に乗せて、
犬が綱引いて、猿が後押し、雑子が綱引きじゃろう。
〔大成 一四三 桃の子太郎(cf.AT五一三A)〕
(出典 吉野ケ里の民話 P58)
標準語版 TOPへ