神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん (34)

 むかし、むかし。

爺さんとお婆さんとおって。お爺さん、山へ柴刈りに行かす〔行かれた〕。

そして、お婆さんは川へ洗濯しに行かす。そして、そこん(そこん)所ぇ(とこれぇ)、

大きな桃が流れてきたち。そいぎい、そん婆さんが拾いあげ家(うち)へ帰って。

そして、山からお爺さんが来てから、あの、割ろうとして、

そいが(桃が)二つに割れて、そのなたあ、子が出てきた。

桃から生まれたけん(から)、桃太郎と名ば付けなった。

そして、その、

「鬼征伐に行くばってん、団子ばこしらえてくいろ(くれ)」て、婆さんに。

婆さんが、そいぎぃ、こしらえてくいなっちゃん〔くれたから〕、鬼征伐に行くけんが。

犬が、「私にも一つください」て。そして、つんのうて(ついて)行く。

また猿ついて行こう。そいから推子も。

そいぎい、ずっと行っぎぃ〔行くと〕、鬼征伐に行くぎにゃ、やっばい犬が扉ば

開くったい。〔開けたと〕。猿がどぎゃんじゃいすっかい〔どんなにかする〕。

推子が上からこうなた。そいぎい、もう鬼も負けたじゃろなた〔でしょうね〕。

そいぎい、鬼も負けたけん(から)、そいぎ宝物(たからもん)よ(を)、

みんな取ってきて車に乗せて、

犬が綱引いて、猿が後押し、雑子が綱引きじゃろう。 

〔大成 一四三 桃の子太郎(cf.AT五一三A)

(出典 吉野ケ里の民話 P58)

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