唐津市馬渡島二松 牧山トモさん(明12生)

 兵庫築地間ですね、そこの土井が決壊(きれ)て、清盛さんが、

「まあ、あの、大きな堤の土井が決壊(きれ)て水のあいすっ」

ち言()うて、話をしたところが、

「それはねぇ、あの、男の肩に横ぶせした者(もん)か。

また、女の人の尻(しい)に横ぶせをした者(もん)か。

それを人柱たつれば」ち言()うて、話をしましたて。

ところが、それを尋ねてね、もう一生懸命にその、

探すばってんが、そう言う人がおらん。

そうして、思うとったところが、清盛さんの肩に横ぶせがある。

そうして、その人を人柱に立てたところが、池の土井が立派(じっぱ)に止まっ。

そうしておったところが、清盛さんの娘を嫁さんやっ時さい。

そうしたところが、その嫁さんが少しもものを言わんごとなった。

ものを何も尋ねても、何も言うても、

ものを一口も言わんごとなったもんじゃっけん、

「この人は唖(おし)(つんぼ)になってしもうたけん、

こんな人をおいた時にどうしようね」て言うてその、

連れ戻しぎゃ行きおった。

ところが、雉子の鳥が、「けん」と鳴いて。

そうしたら、鉄砲で

「ドーン」とその、話して聞かせた時、そうして殺された時、その時、

雉子も鳴かずば撃たれまいものを口ゆえに父は兵庫の人柱

て、わが口ゆえに、言うこと聞かん時、

「利口かなあ」て。

もう、ものを言えばそういうことをなすと考えて言おうじゃったばいねて思うて、

この人を理解して、もうそげなことをやっぱいお母さんが話して聞かせよったな。

まあ、黒崎(長崎県西彼杵郡)あたりゃ、

こう言う話がもう、ようしますもん。

「もう、あすこんへん人が来れば、早う昔語って聞かせんな」

て言うでしょう、私たち聞きよりました。

〔その他〕

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ