唐津市向島 古川コマツさん(明36生)

 あん、勘右衛門さんの青年さんたちの何(なん)もせじぃ、

あの、昔のこっですけんそん、米搗きしよらしたそうです。

こぎゃんか杵でですね。

臼いっちょでそん、一個一個でそん、

替わりごし、ちょうどお餅搗くことででね。

そうして、そけぇ、勘右衛門さんが通りかかってから、青年たちゃそん、

米搗き祝いち炊きよった、家(うち)へんもしよったです。

年のお米ばな、餅搗くと。あの、おご馳走(っそう)しよらすところに

勘右衛門さんの入り込んで、勘右衛門さんが、

そうして青年がおご馳走ば炊きよるごたっけん、泥鰌汁炊きよってな。

そうしたらそん、あの青年たちの、

「仲間入りさせんね」て、青年たちに言わしたそうですたい。そしたら青年たちの、

「よか、よか。勘右衛門さんの来よるばってん、勘右衛門さんのもう、狡(こす)かけん」

て言うたそうですたい。そうしたら、

「いんにゃ、どでんこうでんかたせんね」ち、言うちから、

「そんなら私(うち)は豆腐ば買(こう)うちくるけんね」ち。

あん、泥鰌汁炊きよらしたら豆腐ば、勘右衛門さんな、

あの、買(こ)うていらしたそうです。

「そいけん、俺にも豆腐ば泥鰌汁の中に入(い)れさせんね」ち。

「よか、よか。入れんね」ち言(ゅ)うちから、

「もう、煮えているそうなもんね」て、言うちから、

自分がですね、その豆腐は引き上げてしもうてね、

その泥鰌は、もう青年たちの泥鰌見てみたら、いっちょんおらんて。

豆腐の中ゃあ熱かもんじゃい、青年さんたちゃ、

そがんと言うち聞かせないよらした、お爺さんがね。

(出典 未発刊)

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