伊万里市古枝字中尾 今村松代さん(昭8生)

 先(せん)の子は何か、男の子か知らんばってんが、

その、出かけにお父さんに、

「硯ば、あの、買(こ)うて来てくんしゃい」

て、頼みんしゃった。

そいぎぃ、何(なん)か、いっちょんお父(とっ)たんは

帰って来(き)なれんけんで、その二番嬶(かく)さんが、

「あの、ここん上に立つぎにゃ、

あの、お父(とっ)たんの見ゆっ」ち言(ゅ)うて、

下に釜ばグラグラたぎらかしとって、

そいが上、立ってスルーッて引きなったぎぃ、

茹でてしまいないよったて。

そいぎにゃ、その子供が、おとりになって、

あの、帰って来なった時に、あの、

父(とっ)たん恋しやチンチロリン

唐(から)の硯にゃ何(なん)にしゅう

て歌うて、小鳥が鳴(に)ゃあたて。

そこまでしきゃ聞いとらん。

[大成 二一六 継子と鳥(AT七八一、cf.AT七五一A)]

(出典 未発刊)

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