鹿島市早の瀬  中川内利正さん(大13生)

 むかしその。                                       

 大阪城から逃げて来()ないよっじゃろうなあ。

大野シュウジの守てやったろう。

まあ、逃げて来()てねぇ、そうしてそこに、

あの、構え、まあ城ば造ったろうねぇ。

構えたとが、大野城て言う。

そして大野ていう地名がねぇ、付()いたていう話は聞いとったねぇ。

そいで、そこがちょっと、まちかっと上から、

ちょうど見ゆっ所が、城見松てね。

城が見る松て、松の木の生えとっじゃろうね。

あの、そがん言う風でねぇ、

話ば年寄(とし)いの人の話おいなったけんねぇ。

元はねぇ、あの、大野とこことはねぇ、

道路ができゅうでちゃねぇ、あの、道路ば回収すったあ、

人間ばっかい寄ってさい、両部落でしおったわけたいね。

そいぎそぎゃん時、

「城見松ちゅう所んにきで、中いけばすっぎとにゃあ、

やっぱいこの辺から、やっぱい城の見えよったのう」

て、昔ん者(もん)は、

「そいけん、『城見松』て付()いとっじゃろうのう」

て言うてばい、話よいやっとば俺(おどま)、

あの、若(わっ)か者(もん)じゃっけんが、

その、座って聞きよった。

[自然説明伝説(城・木)]

(出典 未発刊)

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