吉野ヶ里町上中杖上 伊香質ウエさん(明355生)

 その、鷹のですか。

その人は百姓さんね。

田んぼに出とんさんもんじゃいさい、

大きな鷹が飛んできったい。

鷹がその、持って走っですたい。

足引っかけてね。

着物(きもん)着せてあっけん。

そして、そいを何処に落としたかちゅうぎぃ、

何とかお寺ちゅうて、良か所の坊さんたいね。

位の高い所の坊さんが、

赤子が泣きよるもんじゃいさい、そこを育てなったいね。

そして、その坊さんがもう出世してから、

もうねえ、その、あげぇんとして。

親はもう、年のいってくさい、腰や曲がっといなった。

そして、そげな話ばその、聞かすもんじゃ

い、

「親に会うてみたか」ち言( ゅ) うたい。

そいけん、下の坊さんが、

ずうっと尋(たん)ねて歩(そう)ついてね。

そして、田舎の婆さんに会(お)うて、

「自分の子は鷹から盗られたが、

どげんしたこっちゃい、鷹が食うたこっちやい、

どげんしたこっちやい」て、話なったよ。

そしたら、そのね、

「その坊さんに、いっちょ会うてみがくれん

ね。

あんたの子じゃなかろうか」て、

言うようなことでね、行き当たって会わすたいね。

そしてその、親は、びっくいしとっとさい。

その子ば見てね。

そして、とにかくお堂に上がってお話しな

っとこまで。

[大成 一四八 鷲の育て児]

(出典 未発刊)

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