吉野ヶ里町苔野 大井 猛さん(大7生)
犬が、
「ここほれワンワン」で鳴くから、
掘ってみたら、銭(ぜん)や宝があったです。
そいでまた、意地悪爺さんが犬ば借ってから、
また同(おんな)じような、あの、ことを
したけど一つもこう、泥水やがらくたが、
そんなとが出て一つも銭や宝は出んもんだか
ら、犬を殺した。
そして、その死体を貰うて来て埋めて。
そして、松ば植えた。
その松が大きくなったもんだから、臼を作った。
臼で餅を搗きよったら同じように銭や宝が出た。
そいぎぃ、意地悪爺さんが
臼ば借ってから搗くわけ。
また、がらくたが出たもんだから、
そいば叩き割って燃(むや)した。
その灰ば、良か爺さんが貰うて、桜の木に登ったて。
そいぎぃ、殿さんの行列か何(なん)かあ
いよった時に、その灰を撒いたら花が咲いたて。
そいぎぃ、殿さんから褒められてもろうて褒美貰うて。
そいぎまた、今度(こんだ)あ
意地悪爺さんが、そいば真似たわけ。
花は咲かじぃ、殿さんの目やら鼻やら口に入(はい)ってですね。
そいまっきゃ【それでおしまい】。
[大成 一九〇 花咲爺 AT四八〇]
(出典 未発刊)