三田川町衣村 嘉村 勝さん(明33生)

 嫁さんが毎晩出て行くけんが、お亭主さんの、

「こりゃあ、悋気(りんき)して浮気しよっばいと、よか男のおっぎできよっじゃろう」

て、ほんに心痛すって。

「そんない、後から今夜(こんにゃ)あたしが付いて行たてみゅう」

()うて、嫁くさんの行きなったところば、付いて行きなったらしかもんね。

そうしたら、お寺()ゃあしないよった。

そいで、嫁さんの帰りに面被って(おど)したわけたいなたあ。

そうして、面被って、こうして面ば取ろうでしたところが取れん。

そいぎぃ、力まかせに取ってみたところが、顔の肉のその、面にべったい()いて。

その面ば、あつこで見てきたですもんね。福井県で。真宗の坊さんに、

ずっとお説教聞きぎゃ(まい)よんさったらしか、そこの嫁さんな。

(出典 未発刊)

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