伊万里市波多津町井野尾(名前・年齢不詳)女性一名

 狐から騙されたはなかえどん、

私が叔父さんな、高竹所(ところ)、

唐津さい昔ゃ小か坂道ば、あん、登りよったですね。

「そけぇ、狐のおろうごたっ」て、人の言わすて。

わがその、炭ば担(いの)う行きよったですもんね、木炭ば。

そいけん木炭ば担うち行た帰りがけ、日暮しして、

あの、高竹ていう所(とれれ)狐のおっちゅうとん、

おっじゃろうかねぇ、おったらわが木刀で、

あん、うっ叩いてくるっけん、

かんまんと思うちから、来よらしたそうですもん。

そいしたところが、あん、ズーッと歩いて行かすとが、

ヒョッコヒョッコヒョッコに向こう方に、

あの、行けるごたった、その女。

そいけん、こら、ほんなことおるばいて、

あぎゃん言い寄らしたいどん、ほんなこっじゃろうかねぇ、

て、わがちょっ止まれば、向こうも止まる。

行けばヒョッコヒョッコやって行くごたる気のする。

後ろから来る人のありおるじゃろうかねて思うて、

ズーッと行きよらしたところが、そん、あん、

ちょっと立ち止まって、余(あんま)い近まったけん、

立ち止まってそん木刀でくらせらしたちゅう。

そうしたら、あん、ちゃくとの柴のこう、

ちゃくとの柴て言うですもんねぇ、鳥のあぎゃんと

食ぶりとん鳴くとのあっとですもんね、

ありがこう、ひと固まりゃあったそうですもん。

そればくらせらした。

ちょっとそりけん、そいわがあ、狐の騙すどん思うて、

カッチョの柴んごだっとで、あん、

騙されたて人は言いよっとばいねぇて、思わしたそうです。

 (出典 未発刊)

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