伊万里市波多津町井野尾(年齢不詳)男郷土史家

 六十になったら、昔、これ何年頃かは知りませんが、

姥捨山に捨てなければならないように、その郡の決まりでなって。

そしてそん時ゃ背負(かる)うて行って、

帰りにズーッと息子の道迷わんように、柴をズーッと、

まあ、道の角々に置いて行たそうです。

そいで、まあ、そういうふうに親が思うちょらすて、

そりゃどうあってん、その、まあいっちょ殿様にわからんごて、

床ん下に差し入れをして、内緒に殿様に見つからんようにしたところ。

今度、殿様がその、

「灰で縄を綯うような知恵者はおらんかちゅうごたっふうに」

ものども家来に言われてそうです。

そうしたところが、そのお婆さんが、

床の下に縄すっておったお婆さんが、

「縄に塩を塗って、そしてそれを巻いて、そして返上をせろ」て。

そうしたところが、殿様が、

「見事、見事」て褒めらしたて。そして、

「こんな知恵のある者はおらんかん」

それが、親子孝行した印にお婆さんが教えらしたそうです。

そういうふうに話は聞いておりましたが。

(出典 未発刊)

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