伊万里市波多津町井野尾 (名前・年齢不詳)女性二名

 その日、炊きよらすところへ行たち、あの、

匂いばかいでから、こい、美味(おいし)いかろうごたんねぇ、

ち思うち、あの、かえってそれば食べち、ご馳走になって帰らにゃ、

あん、頭の痛(いた)くなって言わすですもんね。

そがんやって、そいけん来らした人にゃ、

「あの、味噌豆煮ろうとん味みて行たてくれんかい」

て言うもん、ちゅうですね。

そがん言うてから、あん、言いよらしたですもんね。

そいがその、継子いじめていうあの、昔は、

あの、前のお母(か)さんの子どもには、あの、

小さく三つにご飯ば握ってやってですね。

そして、それがまた、あん、

自分の子どもには大きゅう一つ握ってやって、

「あの、晩方になったらひもじか」ち言(ゅ)うちから、

いちばんお母さんの子どもが言うたそうですもんね。

そうしたら、

「あんたは三つも食べちょって、なしひまじかか」て、

言わしたそうですもんね。そうしあたら、

「妹はあの、一つしきゃ食べとらん。

お前(まい)三つも食べちょっとこれぇ」て、

言わしたそうですもんね。

そいもんじゃっけん、そうしたら、そのあぎゃんとが、

歌詠みさしたそうです、子どもが。

三つも三つもみーなんつう

いっちょもいっちょも釜―ぶた

て言う。

そいば聞きよったですよ。

歌詠みの意味

「みなーなん」にツウのあっですもんね。

あぎゃんと拾う時のね。

そぎゃん小さかとば、三つも食べたいどん、あん、

妹はこがん太か、そん豆煮るところのお釜の蓋のあっですもんね。

そのお釜のごと太かったて。

(出典 未発刊)

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