伊万里市波多津町津留主屋 市丸カメさん(明34生)

 ご馳走(っそう)して食べよったて、青年たちが。

そしたらそこに勘右衛門が行てですよ、

「ちょっと、開けてくれ、開けてくれ」て言うたて。

「また勘右衛門が来とっけん、開くっごたでけん」て、

皆言うたて。そしたら、

「ああ、零(こぼ)りゅうごたっ、零りゅうごたっ。

ああ、零りゅうごたっけん、開けてくれ」て言うたて。

「今度(こんだ)あ、何(なに)か持って来ちょるじゃろう。

『勘右衛門が零りゅうごたっ』ち言(ゅ)うけん、開けちやろう」て、

開けたわけたい。

「涙の零りゅうごたって、わがが」

そうして、

「お前(まい)たちは、何(なん)食べるか」て言(ゅ)うごたる風で、

あん、一杯何かお汁(つゆ)ば食べよったて。

「ああ、美味(おいし)かろうごたんねぇ」て。

そしてわが口端に何(なに)か出してですね、

蛙(びき)か何かとにかく出してですよ、

「あら、これは。まあ、ご馳走(っそう)になろうと思うとったら、

蛙の入っとったとか何とか」て言うたて。

あら、ああ、そうしたら、こりゃいかんちゅうと言うた風で、

皆、食べんなちゅう話で、

「ああ、もう良かけん、わが一人(ひとい)ご馳走になろう」

と食べらしたて、言う話は聞いたあ。

(出典 未発刊)

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