鳥栖市山内町　永渕アサさん(年齢不詳)

　あるところのお寺に、

欲張りの和尚さんと小僧さんが住んでいました。

ある日、お寺の近くに家が建てられていたそうです。

和尚さんは、自分だけで餅を焼いて食べようと思い、

「どんな家が建ちよるか見て来い」と小僧さんに言いつけました。

小僧さんは、また何か和尚さんが企（たくら）んでいるなと思いながら、

「では、見に行く」と言って、お寺を出たふりをして、こっそり隠れていました。

和尚さんは、小僧もいなくなったので、

ゆっくり餅を焼いて食べようと、準備を始めました。

そして、小僧さんは、餅がそろそろ焼ける頃を見計らって、

「ただいま！」と勝手口から入って来たのです。

和尚さんは、

「もう小僧が戻って来たか？」と、あわてて焼いた餅を

火鉢（ひばち）の灰の中に隠しました。

そして、和尚さんは何もなかったかのように、

「見て来たか？」と小僧さんに聞きました。

すると、小僧さんは、

「ない【はい】。見て来ました」と和尚さんに答えました。

和尚さんは小僧に、

「どぎゃな【どんな】家やったか？」と聞くと、

小僧さんは、金火箸（かなひばし）を手に持って、火鉢の灰の上で、

「あぎゃんとは、ずうっと、ここんにきは柱を建て、あらっ！餅があった」と、

説明しながら、金火箸に餅を刺して抜いていました。

「また、このへんも柱があった」と説明して、また餅を刺して抜いたのです。

そんなことで、小僧さんは和尚さんが焼いた餅を

食べてしまったと言うことでした。

（出典　佐賀の民話第二集　P29）

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