川副町犬井道十四区 徳永広作さん(明30生)

 そいから何処(どけ)じゃいもう、十時ない十時。

チョッと昼たいなたあ。

その、どがんしちゃあ夫婦(みゅうと)その、二階(にきゃ)あに、

いんにゃ、二階にちゅうが、

下でこっちゃい知らんばってん、その、

やらんば出来(け)んちゅうもん。

そいぎぃ、親父さんな

後家でしゃばったこっちゃいなたあ。

(ない)か、飯食うごたっせじぃ、うどんばかい

何時(いつ)でん、もう十時なっぎ二人やいたくって、

(おい)一人(ひとい)よーしておろうごたっ、あんもんかあ」

()うて、その二階に上がって、

わが手でめったいやいしよったちゅう。

そうしたとが、下の息子どんが、

(はよ)うもう、しもうて、ご膳ばいして

飯食おうでしよっ。親父さんな、いっちょん

来らっさん」ち()うもん。そいぎぃ、

「お(とっ)たんに、『飯食う』ち()うて来んかあ」ち言うて、言うたいば、その嫁御じゃいが、

「お父たん、お父たん。あの、飯しまおうーい。

(なん)しよっかんたあ」ち()うたい。

「わがどんばかっい()いよんもんじゃい、(おい)

ふけぇ手のくぼしよったい」ち。

手で出しよったちゅう、親父さんの。

そいば手のくぼしよっち。

チョッとこう、握飯(にぎめし)でん握って、

こう手で食うことを手のくぼちゅうやっかなたあ。

(出典 未発刊)

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