佐賀市大和町江熊野 百武 イトさん(大2生)
ある年に、旱魃(かんばつ)が酷(ひど)うて、親父さんが困っとんさったて。
そいぎ、蛇が出てきて、
「お前ん家(ち)に、娘が三人おっとの一人ば、
俺(おい)の嫁さんにくるっぎ、水ば入れてくるっ」てっじゃい言うて、
そうして、水ば入れてやったそうです。
そいぎ、いざ、娘ばお嫁さんに、やらんばちゅう段になったぎぃ【なったところ】、
姉さん達が「行かん」ちゅうたて。
そいぎ、末娘が、
「お父さんの約束したない、俺は、蛇でん何でんよか」ちゅうて、
お嫁に行きんさったらしかですもんね。
綺麗か青年に化けとっ蛇に連んのうで。
そうしたら、お父さんが病気になって寝込んでしもうたらしかですもんね。
そいけん、占ってもらったら、
「かち烏が、柿の木の先ぃ卵ば生んどっ。
その卵ば飲ますっぎ【飲ませたら】、
病気の良うなっ【良くなる】」ちゅうて言われたて。
そいぎ、蛇のところに嫁いでいった末娘が、
あんまい泣くもんじゃい、青年に化けとった蛇が元の姿になって、
かち烏の巣作っとっ、とこさい【所に】、柿の木ば登って取りぃ行ったて。
そいぎ、かち烏の親が、その蛇ばコッって突っ殺してたて。
そいで、蛇が殺されたものだから、その末娘さんな、助かんさったて。
そいばっきゃ(それでおしまい)
(出典 新佐賀市の民話 P18)